児童発達支援や放課後等デイサービスを運営していると、「稼働率」という数字を確認する機会があります。
「今月の稼働率は何%だったか」
「先月より上がったか、下がったか」
こうした数字は、事業所の運営状況を把握するための大切な情報です。
しかし、稼働率が分かるだけで、次に何をすればよいか判断できるでしょうか。
例えば、同じ70%でも、曜日によって利用人数が大きく違う事業所と、毎日ほぼ同じ人数が利用している事業所では、改善の方向性が異なります。
また、利用予定が多くても、欠席が続くことで実際の来所人数が少なくなっている場合もあります。
私は、稼働率を確認するとき、数字を出すことそのものではなく、その数字から現場の状況を理解することが大切だと考えています。
今回は、児童発達支援の管理者や経営者が、稼働率を日々の運営に活用するための考え方を紹介します。
1.まず、稼働率の計算方法を確認する
事業所の稼働率を管理するときには、計算方法を統一しておく必要があります。
例えば、次のような方法が考えられます。
【実来所稼働率】
実際の延べ利用人数 ÷ 提供可能な延べ利用枠数 × 100
提供可能な延べ利用枠数は、単純な例では、
1日あたりの管理上の利用枠数 × 営業日数
として考えられます。
仮に、1日の利用枠が10人で、月20日営業したとします。
これは説明のための架空の例です。
10人 × 20日 = 200人日
この月の実際の延べ来所人数が150人だった場合、
150 ÷ 200 × 100 = 75%
となります。
この例では、実来所稼働率は75%です。
ただし、これは経営管理のための単純な計算例です。
多機能型事業所、時間帯による運用、利用定員の設定などによって、実際に使用すべき分母は異なります。
法令上の利用定員や配置基準、請求上の取扱いを、この計算式だけで判断することはできません。
管理の目的と事業所の指定内容に合った計算方法を使用することが大切です。
2.利用予定と実際の来所人数を分けて考える
稼働率を確認するとき、私は利用予定と実際の来所を区別することが重要だと考えています。
例えば、先ほどの架空の事業所で、次のような月があったとします。
1日の利用枠:10人
営業日数:20日
提供可能な延べ利用枠:200人日
利用予定:170人日
実際の来所:150人日
この場合、
予定稼働率:85%
実来所稼働率:75%
となります。
予定と実際の来所の間には、20人日の差があります。
その差がどのような理由で生じたのかを確認することが大切です。
例えば、体調不良による欠席、家庭の事情、予定変更など、さまざまな理由が考えられます。
予定人数が少ないことと、予定は多いのに実際の来所が少ないことでは、必要な対応が異なります。
なお、欠席の発生と欠席時対応加算などの請求上の取扱いは別問題です。
実来所人数と請求件数を同じ数字として扱わないよう注意する必要があります。
3.月平均だけでなく曜日別に見る
月間稼働率は、事業所全体の状況を把握するうえで役立ちます。
一方で、月平均だけでは見えないこともあります。
例えば、次のような曜日別の利用予定だったとします。
月曜日:5人
火曜日:9人
水曜日:6人
木曜日:9人
金曜日:7人
これも説明用の架空の例です。
この場合、火曜日と木曜日には利用が集中している一方、月曜日と水曜日には比較的空きがあります。
こうした状況では、単純に利用児童を増やそうとしても、希望する曜日によっては受け入れが難しいかもしれません。
逆に、空きがある曜日については、新しい利用希望者へ案内できる可能性があります。
ただし、定員上の空きがあることと、実際に安全で適切な支援を提供できることは同じではありません。
職員配置、児童の特性、活動内容、必要な支援量なども考慮して判断します。
曜日別の数字は、単に枠を埋めるためではなく、適切な利用機会を考えるための情報でもあります。
4.新規利用までの流れを見る
稼働率を考えるうえでは、すでに利用している児童の人数だけでなく、新規利用までの流れを把握することも役立ちます。
例えば、
- 問い合わせ
- 見学
- 体験
- 契約
- 利用開始
といった流れです。
問い合わせが増えていても、見学につながっていなければ、その途中で何らかの障壁がある可能性があります。
見学に来ているのに契約につながらない場合には、利用曜日や時間、送迎条件、事業所の支援内容などが希望と合っていない可能性もあります。
ただし、契約につながらなかったことだけで、見学対応に問題があると決めつけることはできません。
家庭ごとに希望する支援や生活状況は異なります。
大切なのは、どの段階で相談が進んでいるかを確認し、保護者に必要な情報が届いているかを考えることです。
5.利用継続と欠席の状況を確認する
新規利用者を増やすことだけが、稼働率を考える方法ではありません。
現在利用している子どもたちが、継続して安心して利用できることも大切です。
欠席が続いている場合には、その理由を丁寧に確認する必要があります。
例えば、
- 体調不良が続いている
- 家庭の予定と利用日が合っていない
- 利用時間に負担がある
- 活動内容が本人の希望や状態に合っていない
- 送迎や移動に課題がある
など、さまざまな可能性が考えられます。
ただし、欠席が多いからといって、必ず事業所側に原因があるわけではありません。
また、子どもや保護者に無理な利用を求めることも適切ではありません。
本人や家族の希望を尊重しながら、必要に応じて利用方法や支援内容を調整することが重要です。
6.稼働率と収支を一緒に確認する
事業所の経営を考えるとき、稼働率は重要な指標の一つです。
ただし、稼働率が高ければ必ず黒字になるわけではありません。
収入には、サービスの種類、基本報酬、加算、減算、実際の請求内容などが関係します。
支出には、人件費、社会保険料、家賃、車両費、教材費、その他の運営費などがあります。
例えば、利用人数が増えても、そのために追加の職員配置が必要になれば、人件費が増加することがあります。
反対に、現在の配置で安全に受け入れられる範囲なら、追加利用が収支の改善につながる可能性もあります。
そのため、私は稼働率を見る際には、次の情報も確認したいと考えています。
- 実際の請求額
- 利用人数の変化
- 現在の職員配置
- 人件費とその他の経費
- 今後必要になる採用や設備投資
請求額を確認するときには、複数サービスの売上や加算が混在していないかにも注意が必要です。
実来所人数だけから売上を断定せず、実際の請求データと照らし合わせることが重要です。
7.稼働率を改善するとき、支援の質を後回しにしない
経営上、利用人数を確保することは大切です。
しかし、定員に空きがあるからといって、無条件に新しい利用者を受け入れればよいわけではありません。
児童発達支援では、子ども一人ひとりの発達段階や支援ニーズに応じた関わりが必要です。
職員が安全に支援できる体制か。
新しく利用する子どもに必要な支援を提供できるか。
すでに利用している子どもたちへの支援に無理が生じないか。
こうしたことを確認しながら、利用の受け入れを考える必要があります。
私は、事業所の安定した運営と支援の質は、どちらか一方だけを考えればよいものではないと思っています。
質の高い支援を続けるためにも、運営を安定させることが必要です。
一方で、数字だけを優先して支援の質が下がってしまえば、子どもたちのための事業所という本来の目的から離れてしまいます。
8.管理者が週に一度確認したい5つの数字
ここまでの内容を、現場で使いやすい形に整理します。
管理者が週に一度確認するなら、まず次の5つが考えられます。
① 実来所稼働率
月全体・週全体で、どのくらいの利用があったか。
② 予定稼働率
今後どのくらいの利用予定があるか。
③ 予定と実来所の差
欠席や予定変更によって、どのくらい差が生じたか。
④ 曜日別の利用状況
どの曜日に利用が集中し、どの曜日に受け入れを検討できる余地があるか。
⑤ 見学・契約・利用開始の動き
新しく利用を希望する家庭との相談が、どの段階まで進んでいるか。
この5つを確認するだけでも、単に月末の稼働率を見るより、状況を具体的に理解しやすくなります。
もちろん、これらは法令で義務付けられた一律の管理指標ではなく、日々の運営を考えるための実務上の提案です。
事業所の規模やサービス構成に応じて調整してください。
まとめ|稼働率は、次の行動を考えるための数字
児童発達支援の稼働率は、事業所の運営状況を把握するための重要な指標です。
しかし、稼働率を計算するだけでは、改善につながるとは限りません。
利用予定と実際の来所を分ける。
曜日別の状況を確認する。
欠席や新規利用の動きを把握する。
収支や職員配置と照らし合わせる。
そして、子どもへの支援の質を守りながら、次の行動を考える。
私は、数字をそのように活用することが大切だと考えています。
稼働率は、管理者を評価するためだけの数字ではありません。
事業所の現状を理解し、必要な支援と安定した運営を両立するための手がかりです。
まずは、今週の利用予定と実際の来所人数を曜日別に並べてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
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