療育の仕事は、子どもに「できること」を増やしていく仕事です。
ただし、それは単に
「できないことを練習させる」
「苦手なことを何度も繰り返す」
ということではありません。
子どもが今どこまで分かっているのか。
どこで困っているのか。
どのくらい支えれば、自分でできるようになっていくのか。
その見立てが、療育の現場ではとても大切になります。
そのときに参考になる考え方の一つが、発達の最近接領域です。
発達の最近接領域は、教育心理学者ヴィゴツキーの考え方として知られています。大まかに言うと、子どもが一人ではまだ難しいけれど、大人や友だちの支えがあればできる領域を指します。ヴィゴツキーは、一人で解決できる水準と、大人の援助やより力のある仲間との協同によって解決できる水準の差に注目しました。
SHIPでは、子どもたちの行動を「できる・できない」だけで判断するのではなく、
少し手伝えばできる力
環境を整えれば参加できる力
関わり方を変えれば表現できる力
を大切にしながら支援を行っています。
この記事では、発達の最近接領域を療育の現場でどのように考えるのか、そしてSHIPがどのような専門性を大切にしているのかをお伝えします。
発達の最近接領域とは?
発達の最近接領域は、簡単に言うと、
「今は一人では難しいけれど、支援があればできること」
です。
子どもの力は、大きく分けると次の3つで考えることができます。
| 状態 | 内容 |
|---|---|
| 一人でできること | すでに身についている力 |
| 支援があればできること | これから伸びていく可能性のある力 |
| 支援があってもまだ難しいこと | 今の段階では負荷が高すぎること |
療育で特に大切なのは、真ん中の
「支援があればできること」
を丁寧に見つけることです。
たとえば、集団活動に入れない子がいたとします。
その子を見て、
「集団が苦手」
「参加する気がない」
「わがまま」
と決めつけてしまうと、支援の方向性は狭くなってしまいます。
しかし、少し丁寧に見ると、別の見立てができます。
- 活動の見通しが分かれば入れるかもしれない
- 最初から全員の中に入るのは難しいが、職員の近くなら参加できるかもしれない
- 言葉だけの説明では分かりにくいが、写真や実物があれば分かるかもしれない
- 最後まで参加するのは難しくても、最初の3分なら参加できるかもしれない
- 友だちとの距離が近すぎると不安になるが、少し離れると落ち着けるかもしれない
このように、子どもの姿を細かく見ていくと、
「できない」の中に、支援があればできる可能性
が見えてきます。
それが、療育の専門性の入口です。
療育の現場で大切なのは「できない」と決めつけないこと
子どもの行動には、必ず背景があります。
たとえば、次のような姿が見られることがあります。
- 活動に入れない
- 順番を待つことが難しい
- 気持ちの切り替えに時間がかかる
- 友だちとの距離が近くなりすぎる
- 指示を聞いていないように見える
- 失敗すると怒ったり泣いたりする
- 思い通りにならないと手が出てしまう
こうした姿を、表面的に
「困った行動」
として見るだけでは、支援は深まりません。
大切なのは、行動の前後や環境を見ながら、
なぜその行動が起きているのか
を考えることです。
たとえば、指示を聞いていないように見える子でも、実際には、
- 聞こえているが、意味が分かっていない
- 最初の指示は分かるが、複数の指示になると難しい
- 周囲の音や刺激が多くて注意が向きにくい
- 何をすれば終わりなのかが分からず不安になっている
- 失敗した経験があり、活動に入ること自体を避けている
ということがあります。
この見立てが変わると、支援も変わります。
「ちゃんと聞いて」と言うのではなく、
短い言葉で伝える。
写真や実物を使う。
最初にやることを一つだけ示す。
終わりを分かりやすくする。
できた場面をすぐに肯定する。
このように、子どもに合わせて支援を調整していくことが、療育の現場では重要です。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインでも、児童発達支援は本人支援だけでなく、家族支援、移行支援、地域支援・地域連携を含めて整理されています。子ども本人だけを見るのではなく、家庭や園、地域とのつながりの中で支援を考える視点が求められています。
SHIPで大切にしている支援の視点
SHIPでは、子ども一人ひとりの発達段階や生活背景を見ながら、支援を考えています。
大切にしているのは、
子どもを変えようとする前に、まず大人側が見立てと関わり方を整えること
です。
同じ行動でも、子どもによって背景は違います。
同じ「活動に入れない」という姿でも、
- 見通しが持てない不安
- 感覚的な苦手さ
- 友だちとの関係の難しさ
- 失敗への不安
- 言葉の理解の難しさ
- 疲れや体調
- 注目されることへの抵抗感
など、背景はさまざまです。
だからこそ、SHIPでは職員一人の感覚だけで判断せず、チームで共有しながら支援を考えます。
「この子はなぜ今、活動に入りにくかったのか」
「どの声かけなら入りやすかったのか」
「どの環境なら落ち着いて取り組めたのか」
「どこまでなら一人でできて、どこから支援が必要だったのか」
こうしたことを、日々の支援や振り返りの中で確認していきます。
療育の専門性は、特別な技術を一つ覚えれば身につくものではありません。
子どもを見る。
記録する。
チームで話す。
支援を試す。
子どもの反応を見る。
また修正する。
この積み重ねの中で、少しずつ深まっていきます。
「少し手伝えばできる力」を見つける
発達の最近接領域の考え方を療育に活かすとき、重要なのは、
子どもにとってちょうどよい難しさを見つけること
です。
簡単すぎる課題だけでは、力は伸びにくくなります。
反対に、難しすぎる課題ばかりでは、子どもは不安になったり、失敗経験を重ねたりしてしまいます。
療育では、
少し頑張ればできる
少し支えればできる
成功体験として終われる
という設定が大切です。
たとえば、順番を待つことが難しい子に、いきなり長時間待つことを求めるのではなく、
- まずは一人分だけ待つ
- 職員と一緒に待つ
- 「次は自分」と分かるようにする
- 待てたらすぐに順番がくるようにする
- 待てた場面を具体的にほめる
というように、支援を調整します。
このとき、職員はただ見守るだけではありません。
子どもが成功しやすいように、環境を整え、声かけを調整し、必要なタイミングで手助けします。
そして、できるようになってきたら、少しずつ支援を減らしていきます。
この
支援すること
と
支援を減らしていくこと
のバランスが、療育の難しさであり、面白さでもあります。
SHIPで働く中で身につく専門性
SHIPで働く中で大切にしているのは、単に活動を進める力だけではありません。
子どもの行動を見て、背景を考え、支援につなげる力です。
具体的には、次のような力が求められます。
子どもの行動を観察する力
子どもが何をしているかだけでなく、
その前に何があったのか、
どの場面で困りやすいのか、
どの関わりで落ち着いたのかを見ます。
発達段階をふまえて支援を考える力
年齢だけで判断せず、言葉の理解、認知、運動、感覚、社会性、情緒面などを含めて、今の発達段階を見ます。
チームで相談する力
療育は、一人の職員だけで完結する仕事ではありません。
自分の見立てをチームに共有し、他の職員の視点も取り入れながら、よりよい支援を考えていきます。
保護者や園・学校と連携する力
子どもは事業所の中だけで生活しているわけではありません。
家庭、園、学校、地域での姿も大切にしながら、支援をつなげていきます。
支援を振り返り、修正する力
一度考えた支援が、必ずうまくいくとは限りません。
子どもの反応を見ながら、
「この支援でよかったのか」
「もう少し分かりやすくできるか」
「環境を変えた方がよいか」
と振り返り、修正していきます。
このような力は、日々の実践の中で少しずつ育っていきます。
保育士・児童指導員の経験は、療育で活かせる
SHIPには、保育士、児童指導員、教員免許を持つ方など、子どもに関わる専門職として働く方がいます。
保育や教育の経験は、療育の現場でも大きく活かせます。
たとえば、
- 子どもの小さな変化に気づく力
- 遊びを通して関わる力
- 集団の流れをつくる力
- 子どもの気持ちを受け止める力
- 保護者と関わる力
- 日々の様子を記録する力
こうした経験は、療育の土台になります。
一方で、療育ではさらに、
なぜその行動が起きているのか
どの発達段階にあるのか
どの支援なら次の力につながるのか
を考える視点が求められます。
保育や教育で培ってきた経験に、療育の見立てやチーム支援の視点が加わることで、子どもへの関わりはさらに深まっていきます。
こんな方はSHIPに合いやすいです
SHIPでは、経験年数だけでなく、子どもに向き合う姿勢を大切にしています。
次のような方は、SHIPの療育に合いやすいと思います。
- 子どもの行動の背景を考えたい方
- 「できない」と決めつけず、支援の方法を考えたい方
- 一人で抱え込まず、チームで相談しながら働きたい方
- 療育の専門性を高めたい方
- 保育士や児童指導員の経験を、より専門的な支援に活かしたい方
- 子どもの小さな成長を大切にできる方
- 記録や振り返りを通して、自分の支援を改善していきたい方
- 保護者や園・学校との連携にも関心がある方
反対に、
「自分のやり方だけで進めたい」
「相談や振り返りはあまりしたくない」
「子どもの行動をすぐに本人の問題として捉えてしまう」
という方には、SHIPの支援の進め方は合いにくいかもしれません。
SHIPでは、子どもだけでなく、職員も学び続けることを大切にしています。
療育の仕事は、難しい。でも、深く楽しい。
療育の仕事は、簡単ではありません。
子どもの姿は一人ひとり違います。
同じ支援が、別の子にも同じように合うとは限りません。
昨日うまくいった関わりが、今日もうまくいくとも限りません。
だからこそ、考える必要があります。
なぜ今日は難しかったのか。
どこまでは分かっていたのか。
どの支援があればできたのか。
次はどう関わるとよいのか。
その積み重ねの中で、子どもが少しずつ変わっていく瞬間があります。
昨日は活動に入れなかった子が、今日は職員と一緒に少しだけ参加できた。
言葉で伝えることが難しかった子が、身振りや一言で気持ちを伝えられた。
友だちとトラブルになりやすかった子が、少し待つことができた。
不安でいっぱいだった子が、「もう一回やる」と言えた。
その小さな変化を見つけ、支え、次につなげていくことが、療育の仕事のやりがいです。
SHIPで療育の専門性を高めたい方へ
SHIPでは、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援・相談支援を通して、子どもと家族を支える仕事を行っています。
私たちが大切にしているのは、子どもを「できる・できない」だけで見るのではなく、
今どこに困りがあるのか
どのような支援があれば力を発揮できるのか
家庭や園・学校とどのようにつなげていくのか
をチームで考えていくことです。
療育の専門性を高めたい方。
保育士や児童指導員の経験を、発達支援の現場で活かしたい方。
子どもの行動の背景を学びながら、チームで支援を考えたい方。
SHIPでは、見学や採用相談を受け付けています。
いきなり応募ではなく、
「まずは現場を見てみたい」
「仕事内容について話を聞きたい」
「自分の経験が活かせるか相談したい」
という形でも大丈夫です。
子どもの成長を、チームで支える仕事に関心のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

