児童発達支援や放課後等デイサービスでは、管理者が現場の支援に入りながら、事業所全体の運営業務も担っていることがあります。
子どもへの支援、職員の配置や相談、保護者対応、会議、記録の確認、研修や委員会の準備。
日々さまざまな仕事があり、管理者は多くのことを考えながら業務を進めています。
「現場に入っていると事務仕事が進まない」
「事務仕事をしていると、現場のことが気になる」
「職員から相談されるたびに、自分の仕事が中断されてしまう」
このような悩みを感じることもあるのではないでしょうか。
私自身、児童発達支援や放課後等デイサービスを運営する中で、管理者の育成や役割分担について考えてきました。
今回は、子どもへの支援の質を大切にしながら、管理者が現場と運営業務を両立するための考え方を整理します。
1.現場支援と運営は、どちらも大切な仕事
管理者の仕事を考えるとき、まず大切にしたいのは、現場支援と運営を対立するものとして考えないことです。
子どもへの直接的な支援は、事業所にとって重要な仕事です。
一方で、必要な職員配置や記録の確認、事故防止、職員育成などが適切に進められていなければ、安定した支援を続けることは難しくなります。
つまり、現場の支援と事業所の運営は、別々の目的を持っているわけではありません。
子どもたちに継続して質の高い支援を届けるために、どちらも必要な仕事です。
管理者がすべての仕事に同じ時間をかける必要はありませんが、事業所全体の状況を理解し、必要な判断ができる状態をつくることが大切だと考えています。
2.管理者の業務を4つに分けて考える
業務が多いときには、目の前にある仕事から順番に対応したくなるかもしれません。
しかし、それだけでは、本当に優先すべき仕事が後回しになる可能性があります。
そこで、業務を次の4つに分けて考える方法を提案します。
これは実務を整理するための一例であり、法令上の正式な分類ではありません。
① 安全や重大な問題に関わる仕事
子どもの安全確保、事故や重大なトラブルへの対応、必要な人員配置の確認などです。
早急な判断が必要なものは、他の業務よりも優先して対応します。
② その日の支援を成立させるための仕事
職員間での役割調整、活動の準備、必要な情報共有、保護者への当日中の連絡などです。
その日の運営に直接関わる仕事を整理します。
③ 期限が決まっている運営業務
各種書類、届出、会議の準備、研修計画などです。
必要な期限を確認し、直前に慌てないよう進捗を管理します。
④ 将来の支援の質を高めるための仕事
職員の育成、記録方法の見直し、業務の整理、支援方針の共有などです。
緊急性が低く見えることもありますが、事業所を安定して運営するためには大切な仕事です。
こうして分類すると、今すぐ対応することと、時間を確保して進めることを分けやすくなります。
3.管理者が「全部すぐに対応する」必要はない
管理者が職員から相談を受けることは、大切な仕事です。
ただし、相談されたことをすべてその場で解決しようとすると、ほかの業務が進みにくくなることがあります。
例えば、次のような区別が考えられます。
今すぐ判断が必要な相談なのか。
その日のうちに確認すればよい内容なのか。
次の会議や面談で、時間を取って検討する内容なのか。
相談内容の緊急性や重要度によって、対応方法を変えていきます。
もちろん、子どもの安全や重大な問題に関する相談を後回しにしてはいけません。
大切なのは、すべてを同じ緊急度で扱わないことです。
4.現場の情報を短い時間で共有できるようにする
管理者が現場の状況を把握するために、すべての活動に参加する必要があるとは限りません。
日々の情報共有を工夫することで、現場の様子を把握しやすくする方法もあります。
例えば、活動前に次の3点を確認してみます。
① 今日、特に配慮が必要な子どものこと
体調や支援上の注意点、予定の変更などを共有します。
② 今日の職員配置と役割
誰がどの活動を担当し、必要な場面で誰が援助に入るのかを確認します。
③ 今日中に判断が必要なこと
保護者との連絡や活動の調整など、当日の対応が必要な事項を整理します。
こうした内容が共有されていれば、管理者がその都度すべてを確認しなくても、現場の職員が動きやすくなる可能性があります。
ただし、共有すべき情報の範囲は事業所の状況によって異なります。個人情報や必要な引継ぎが漏れないようにすることも重要です。
5.現場を任せるためには、職員の育成も必要
管理者が現場から離れる時間をつくりたいと思っても、職員が判断できる状態になっていなければ、簡単には実現しません。
そこで、日々の業務を通して職員が経験を積めるようにすることが大切だと考えています。
例えば、活動の準備や役割調整を職員へ任せる場合、最初からすべてを一人で進めてもらう必要はありません。
最初は管理者と一緒に考える。
次に、担当できる範囲を少しずつ広げる。
必要な場面では相談を受け、判断の理由を伝える。
そのように経験を積みながら、職員が自分で考えて動けるように支えます。
私は、仕事を任せる際には、任せっぱなしにせず、途中で助言したり、必要なときにフォローしたりすることが重要だと考えています。
権限移譲については、関連記事「管理者が全部判断しない組織へ|権限移譲の始め方」でも詳しく解説しています。
6.管理者自身が業務を整理することも大切
業務を効率よく進めるためには、職員に任せることだけではなく、管理者自身の仕事を整理する必要もあります。
例えば、
- 毎日必要な仕事
- 毎週確認する仕事
- 毎月実施する仕事
- 年間を通して準備する仕事
を一覧にしてみます。
そのうえで、どの仕事を自分が担当し、どの仕事をほかの職員と一緒に進め、どの仕事を任せられるかを考えます。
業務を整理するときには、単に数を減らすことだけを目的にしません。
必要な業務を確実に実施できること、子どもへの支援の質が維持できること、職員に過度な負担がかからないことも大切にします。
また、法令や制度上、管理者や児童発達支援管理責任者等に求められる責任がある場合には、その役割に応じた対応が必要です。
7.忙しさだけで、管理者の仕事を評価しない
管理者が毎日忙しく働いていることと、事業所が安定して運営できていることは、必ずしも同じではありません。
大切なのは、必要な仕事が適切に進み、職員が自分の役割を理解し、子どもへの支援が継続できているかということです。
例えば、管理者が不在の時間でも、職員が必要な情報を共有し、判断に迷ったときには適切に相談できる。
そのような状態を少しずつつくっていくことが、組織の安定につながると考えています。
もちろん、管理者が現場へ入ること自体に問題があるわけではありません。
現場の子どもたちや職員の様子を知ることも、管理者にとって重要です。
大切なのは、現場のすべてを一人で担うことではなく、必要なところに適切に関われることです。
8.まずは「今週の仕事」を見直してみる
現場と運営の両立を考えるとき、最初から組織全体を大きく変える必要はありません。
まずは今週の自分の仕事を振り返ってみてください。
どの仕事に時間がかかっているか。
何度も同じ確認をしていないか。
職員に任せられそうな仕事はあるか。
準備しておけば、当日の負担を減らせそうな仕事はあるか。
こうしたことを整理すると、改善できる部分が見えてくるかもしれません。
私自身も、管理者が一つひとつの仕事を理解し、自分で考えて進められる状態をつくることを大切にしたいと考えています。
まとめ|管理者の役割は、すべてを一人で行うことではない
児童発達支援や放課後等デイサービスの管理者には、現場と運営の両方に関わる仕事があります。
その仕事を両立するためには、
- 業務の優先順位を明確にする
- 現場で必要な情報を共有する
- 職員の役割を整理する
- 任せる仕事と管理者が判断する仕事を分ける
- 定期的に業務の進め方を見直す
といったことが重要になります。
管理者がすべてを一人で行うのではなく、職員がそれぞれの役割を果たし、チームとして支援できる状態をつくる。
そのために、現場を理解しながら、事業所全体を見て判断できる力を高めていきたいと考えています。
児発・放デイの運営・職員育成について
株式会社THE SHIPでは、児童発達支援・放課後等デイサービスの運営経験を踏まえ、職員育成や事業所の運営に関する相談窓口を設けています。
運営支援の継続サービスについては提供条件を準備中のため、現在の受付状況や対応範囲は公式案内でご確認ください。
この記事について
本記事は株式会社THE SHIP代表・土屋勇太の管理者育成や組織づくりに関する考え方を基に、実務上の提案として整理しています。
記載した業務の分類や進め方は検討例を含み、全事業所で導入・効果検証済みであることを示すものではありません。

